1977年に発表された「The Stranger」、さらに翌年の「52nd Street」。ビリー・ジョエルの名を世界的に広める大ヒットとなったこの2枚のアルバムで、ニューヨークに生きる人間の生き様を描いたビリー。しかし'82年の作品「The
Nylon Curtain」で描かれるドラマはもっと広い世の中に目を向けられたものだ。
アレンタウンはペンシルベニア州に実在する小さな町である。そこに住む人々が不況という現実に直面し、失望の中に生きる心情を描いたこの曲。70年代の後半から徐々に低迷したアメリカ経済の中で苦悩する人々に目を向けたこの曲は、それまでのビリーの歌詞とは一味違うものだ。「The
Stranger」で描かれていた、都会から田舎へ引っ越そうという「Movin' Out」や、レストランの情景「Scenes
From An Italian Restaurant」、そしてバーで歌うパフォーマーの目を通して人々の情感を描いた代表作「Piano
Man」などとは明らかに違う観点で書かれた詞である。次第に現実的に、そして社会的になっていったビリーの創作の原点がここにあるようだ。
ALLENTOWN
Well we're living here in Allentown / And they're closing all the factories down
Out in Bethlehem they're killing time / Filling out forms / Standing in line
Well our fathers fought the Second World War
Spent their weekends on the Jersey Shore / Met our mothers in the USO
Asked them to dance / Danced with them slow / And we're living here in Allentown
But the restlessness was handed down / And it's getting very hard to stay
僕らはアレンタウンで暮らしている / 工場が閉鎖され続けるこの町で
ベスレヘム製鉄所では皆が時間をつぶしてる / 書類に記入したり / 列に並んだりしながら
僕らの父親は第二次世界大戦を戦った
彼らは週末をニュージャージーの海岸で過ごし / 軍の慰問施設で母親と出会い
一緒に踊ろうと誘ったのさ / そしてスローなダンスを踊ったんだ
おかげで僕らはこのアレンタウンで暮らしてるというわけさ
だけど過酷な労働が強いられ / 今やここで暮らすのも楽じゃない
Well we're waiting here in Allentown / For the Pennsylvania we never found
For the promises our teachers gave / If we worked hard / If we behaved
So the graduations hang on the wall / But they never really helped us at all
No they never taught us what was real / Iron and coke / And chromium steel
And we're waiting here in Allentown
But they've taken all the coal from the ground / And the union people crawled away
僕らはここアレンタウンで待ちつづける / 決して見つからなかったペンシルベニアの地と
先生が残した約束を / もし一生懸命に働いたら / もし摂生し続けたら・・
卒業式の面影が壁にかけてある / だけどそんなものは決して役には立たなかった
彼らは何が真実かなんて教えてはくれなかったよ / 鉄にコークス、それにクロム鉄鋼
僕らは今もこのアレンタウンで暮らしてる
だけど彼らが石炭を全部掘り起こしてしまった / そして組合の連中は逃げて行ったのさ
Every child had a pretty good shot / To get at least as far as their old man got
But something happened on the way to that place
They threw an American flag in our face / Well I'm living here in Allentown
And it's hard to keep a good man down / But I won't be getting up today
どこの子供にもチャンスは与えられた / せいぜい親と同じ程度の人生は送れるだろうと
だけどそこに辿りつく前に何かが起こった / 連中が僕らの顔にアメリカ国旗を投げつけたんだ
今も僕らはアレンタウンで暮らしている / 善人を落ち込ませるのは容易くはない
だけど今日、僕は起き上がる気力さえないのさ・・・・